障がい者も楽しむフットサルの世界｜多様な競技種別から普及支援、トレーニング法まで徹底ガイド

フットサルは狭いコートと小さなボール、スピーディーな攻防が魅力の5人制競技ですが、障がいの有無を問わず誰もが楽しめるスポーツとしても発展しています。視覚、肢体、知的、精神の各障がいカテゴリに対応するアレンジが施され、パラリンピック正式種目を目指す動きも活発化中。

競技ルールや支援体制、トレーニング法まで、本記事では障がい者フットサルの全貌を徹底解説します。

障がい別フットサル種別と特徴

視覚障がい者向けのフットサルは「ブラインドサッカー」と呼ばれ、ゴールキーパー以外はアイシェードで視覚を封鎖。音の出るボールを使用し、ガイドの声を頼りにプレーします。コートはタッチラインを触知可能なフェンスで囲み、安全性と音の反響を確保します。

車いすバスケットと同様にパワーアシスト付き車いすを用い、ドリブルではなくボールを手で押すルールを採用。車いす同士の接触を認めることで、フィジカルコンタクト性を維持しつつ、スピード感あるゲーム展開を実現します。

肢体不自由者向けにはハンドパワー車いすを用いるほか、知的障がい者向けプログラムではルールを簡素化し、試合時間やピッチサイズを小さく設定。コーチングスタッフが多めに配置され、きめ細かなサポートを行います。

JBFAは国内選手権、チャンピオンシップ、アジア選手権予選などを定期開催。全国８地域に登録チームがあり、初心者向け体験会からトップレベルのナショナルチーム強化合宿まで幅広いプログラムを提供しています。

日本パラスポーツ支援協会（JPSC）などが主体となり、東京や大阪を中心にリーグ戦を運営。企業スポンサーや自治体と連携し、障がい者と健常者が混在するハンディキャップマッチも実施しています。

パス、トラップ、シュートといった基本技術は、障がいの種類を問わず共通。音の認識トレーニングやハンドリング動作、車いすの操作性向上ドリルを併用し、選手一人ひとりの特性に最適化します。

ブラインド、車いす、知的障がい者チームでは、対話や手振りを通じたコミュニケーション訓練が重要。コーチは声かけのタイミングやトーンを工夫し、安心感を醸成しながらチーム連携を促します。

競技を通じた身体機能向上に加え、精神的自立や自己効力感の醸成、ソーシャルインクルージョン（社会包摂）の実現など、多面的な効果が報告されています。地域コミュニティや学校、福祉施設との連携イベントを開催することで、障がいへの理解と偏見解消にも寄与します。

ブラインド用ボール、アイシェード、フェンス、車いす用起伏なしフロアなど、それぞれの競技に即した設備を準備。共用体育館で開催する場合は、施設管理者と事前調整し、段差解消スロープや更衣室のバリアフリー化を図ります。

コーチ、審判、運営ボランティアには障がい特性理解のための研修を実施。手話通訳者や点字資料作成、音声ガイド要員など、多様な支援スタッフを確保し、安心・安全な運営体制を整備します。

北海道のNPOチーム「Hope Futsal」は、地域包括支援センターと連携し、週2回の福祉施設開催を開始。参加者は半年で運動能力向上と自立度が高まり、社会参加の幅が拡大しました。一方で、地方開催時の機材輸送コストや専門指導者不足といった課題も浮き彫りとなりました。

国際パラリンピック委員会（IPC）による種目追加審査が進行中のブラインドサッカー。FIFAとの協力や国際大会実績を加速させることで、2028年ロサンゼルス大会での正式採用を目指す動きが活発化しています。

障がい者スポーツとしての認知向上と競技発展を両立させるため、今後も行政、企業、NPOが一体となった支援が求められます。

障がい者フットサルは、技術と福祉が融合した新たなスポーツモデルです。多様な種別の理解と支援体制の整備、トレーニング手法の工夫、社会的意義の啓発を推進することで、真のインクルーシブスポーツを実現できます。

本ガイドが、障がい者フットサル導入や運営、普及支援の一助となり、すべての人が共に楽しむフットサル文化を広げるきっかけとなれば幸いです。