なぜフットサルがリハビリに有効なのか
フットサルは狭いコートでの瞬発的なダッシュと急停止、方向転換を繰り返す競技です。この多様な動きは、スポーツ障害や術後の筋力・バランス回復に最適な運動刺激を与えます。
適切に負荷を調整すれば、関節可動域の改善、筋力増強、神経‐筋協調性の向上を同時に図れるため、医療・理学療法の現場でも注目が高まっています。
フットサルリハビリの基本原理
段階的負荷と機能再建のステップ
リハビリは「急性期」「回復期」「機能向上期」の3ステージに分かれます。急性期は軽いボールタッチやストレッチを中心に行い、炎症と痛みを抑制。回復期にはパス&トラップ、軽いドリブルを導入し、筋力とバランスを段階的に再構築。
最終の機能向上期ではミニゲームや対人練習を加え、実戦的な動作パターンを再統合します。
心肺機能へのアプローチ
術後や長期離脱で低下しがちな心肺機能を、インターバル運動を含むフットサル動作で効率的に再活性化。短時間の全力ダッシュと回復ジョグを繰り返すことで、VO₂max向上と心拍制御能力の回復を狙います。
ステージ別プログラム例
急性期:0~2週間目のアクティブリカバリー
・ウォームアップ:5分の歩行+動的ストレッチ
・ドリル①:ボールを置いた位置での足裏タッチ30秒×2
・ドリル②:コーン間を軽いジョグ+2タッチパス×5本
・クールダウン:静的ストレッチ全身10分
痛みのない範囲で動作を行い、主治医・理学療法士と連携して炎症の再発を防ぎます。
回復期:3~6週間目の筋‐神経協調トレーニング
・ウォームアップ:10分のリズミカルジョグ+動的ストレッチ
・ドリル①:5mドリブル&パス×3セット
・ドリル②:1対1スラローム×10回(負荷小)
・ドリル③:ミニゴール対人ゲーム(2対2、3分×4本)
・クールダウン:フォームローラー&ストレッチ10分
患部の筋‐腱機能を回復させつつ、コート上での方向転換や急停止を安全に再導入します。
機能向上期:7週目以降の実戦的プログラム
・ウォームアップ:心拍130までのジョグ+動的ストレッチ
・ドリル①:30秒全力ダッシュ+60秒ジョグ×6セット
・ドリル②:3対3ミニゲーム(5分×3本)
・ドリル③:GKパワープレイ導入(実戦想定)
・クールダウン:深呼吸を取り入れた静的ストレッチ10分
再発リスクを管理しながら、試合強度を模した動作パターンを完全再構築します。
実践ポイントと注意事項
痛みと腫れのサインに注意
プログラム中の「ズキッ」とした痛みや動作後の過剰な腫れは、負荷が強すぎる証拠。直ちに負荷を軽減し、アイシングや医師へ相談を行います。
個別性の徹底
年齢、術式、体力レベル、コンディションにより回復速度は千差万別。必ず専門家の評価のもと、週単位でプログラムを調整し、書面化して進捗を管理します。
医療・フィットネス連携の成功事例
あるスポーツクリニックでは、ACL再建術後の患者にフットサルベースのリハビリを導入し、従来の直線的リハビリに比べて復帰までの期間が平均2週間短縮。術後6カ月でのジャンプ力・片脚スクワットの合格率が90%以上に改善しました。
まとめ:フットサルリハビリで“動ける喜び”を取り戻す
フットサルをリハビリに取り入れることで、単なる筋力回復や可動域拡大だけではなく、スポーツ特有の俊敏性や戦術的思考までも再構築できます。段階的負荷管理、痛みサインの厳格なチェック、医療・トレーナー・コーチとの連携を徹底し、安心・安全に“動ける喜び”を取り戻しましょう。

