社内外の重要情報を扱う会議は、セキュリティリスクを放置すると情報漏えいや不正アクセス、なりすましなどの被害につながります。
本記事では物理的対策、システム・ネットワーク対策、運用ルールとマナー、エンドポイント保護、緊急時の対応まで詳しく解説します。
ぜひ自社の会議運営にお役立てください。
1. 会議室と物理的環境のセキュリティ
1.1 入退室管理の徹底
会議室は重要情報のやり取りが行われるため、入退室管理を厳格化すべきです。入退室カードやセキュリティキーの運用に加え、受付での本人確認をルール化することで、社外関係者や不審者の立ち入りを未然に防ぎます。
また、会議終了後の会議室施錠を必須とし、無人状態を回避することで盗聴や持ち出しリスクを低減できます。
1.2 社内外を分離した会議ゾーンの設置
機密レベルに応じて会議室を分類し、部署内限定用、顧客対応用、社外取引先用などゾーン分けを行うことで、情報漏えいリスクを抑えます。さらに、専用ネットワークやゲストWi-Fiを設置し、外部端末の接続を物理的に分離すると、ネットワーク経由の攻撃にも強くなります。
2. オンライン会議のシステム・ネットワーク対策
2.1 安全性の高いプラットフォーム選定
ZoomやTeams、Meetなどオンライン会議ツールを選ぶ際は、通信の暗号化方式や認証機能を比較検討しましょう。エンドツーエンド暗号化や2要素認証をサポートするプラットフォームを採用することで、中間者攻撃や不正アクセスを防止できます。
2.2 会議ID・パスコードの運用ルール
会議URLやIDを公開チャンネルに貼り付けない、パスコードを必ず設定する、使い捨てリンクを利用するなど、URLの乱用・拡散を抑えるルールを定めます。特に社外ゲストを招く場合はパスコードの別送を徹底し、第三者の誤参加リスクを低減しましょう。
2.3 ネットワークアクセス制御とVPN利用
社内会議用ネットワークをインターネットから分離し、リモート参加者にはVPN接続を義務付けることで、インターネット経路での傍受を防ぎます。特権ネットワーク機器や会議用サーバーへのアクセスは、IPアドレス制限やファイアウォールで厳格に制御しましょう。
3. 運用ルールと参加者のマナー強化
3.1 会議資料の取り扱いガイドライン
電子ファイルの共有は社内ファイルサーバーやセキュアなクラウド(SaaS)に限定し、ダウンロード不可設定や閲覧期限を設けます。紙資料を使う場合は配布枚数を最小限にとどめ、回収確認リストを作成して持ち出しを防ぎましょう。
3.2 参加者の認証・名乗り出しルール
会議冒頭に必ず出席者確認を行い、全員が名前と役職を名乗るルールを定めます。オンライン会議では画面表示名と実名の一致を求め、ミュート解除時には姓名を示すガイドラインを周知して、なりすましを防止します。
3.3 メモ・録画の許可範囲と通知
会議録画や録音、画面キャプチャの範囲を事前に明示し、許可者を限定します。録画機能を使う際は開始前と終了後に必ず全員に通知を行い、録画ファイルの保管場所やアクセス権限を厳格に管理しましょう。
4. エンドポイントとデバイス保護
4.1 社用端末のセキュリティ強化
会議で使用するPCやタブレットは、最新のOSパッチとウイルス対策ソフトを適用し、ディスク暗号化やBIOSパスワードを設定します。個人所有端末の利用を禁止するか、BYODポリシーを整備し、MDM(Mobile Device Management)で監視・制御を行いましょう。
4.2 カメラ・マイクの物理的遮断
情報漏えい防止のため、公私混合利用端末では会議終了後に必ずカメラカバーを閉じ、マイクジャックを抜く運用を徹底します。さらに、Web会議ツール上のミュート・ビデオオフ状態をデフォルトに設定し、意図しない映像や音声送信を防ぎましょう。
4.4 無線LANアクセスポイントの分離
会議室内のゲストWi-Fiは社内基幹LANとVLANレベルで分離し、ゲスト端末から社内資産へのアクセスを遮断します。無線LANの暗号化方式はWPA3を推奨し、定期的にSSIDとパスワードを更新しましょう。
5. 緊急時対応とインシデント管理
5.1 インシデント発生時の連絡体制
不正アクセスや情報漏えいが発生した場合、即座に関係者への通知と会議の中断・終了を判断する連絡フローを整備します。情報システム部門、総務部門、法務部門を含む緊急連絡網を用意し、迅速に対応チームを結成できる体制を確立しましょう。
5.2 ログ取得とフォレンジック準備
オンライン会議ツールやネットワーク機器のログを自動で長期保存し、インシデント発生時に証拠として活用できるようにします。必要に応じてログの一括エクスポート機能やSIEM(Security Information and Event Management)連携を検討し、フォレンジック調査の準備を整えます。
5.3 定期的なセキュリティ演習
会議運営シナリオを想定したセキュリティ演習を半期ごとに実施し、不審人物の侵入や録画データ窃盗などを模擬体験します。演習結果をもとに会議ポリシーやツール設定を見直し、組織のセキュリティリテラシー向上を図りましょう。
6. 継続的改善と最新技術の取り込み
6.1 セキュリティポリシーの定期見直し
新たな脅威やツールのアップデートに合わせ、会議セキュリティポリシーを年に一度以上見直します。社内ルールが陳腐化しないよう、セキュリティトレンド報告や脆弱性情報を定期的にチェックし、必要に応じてガイドラインを改訂しましょう。
6.2 ゼロトラストモデルの導入検討
社内ネットワークを「信頼しない」前提で再設計するゼロトラストセキュリティを会議システムにも適用します。マイクロセグメンテーションやIDベースのアクセス制御を組み合わせ、会議データや通信を極限まで保護するアーキテクチャを検討してください。
6.3 AI/機械学習による脅威検知
AIを活用した異常検知システムで、会議システムにおける不審なアクセスパターンや音声解析をリアルタイムに監視します。自動アラートやブロック機能を組み合わせることで、人の手による監視なしに高度なセキュリティを維持できます。
まとめ:万全のセキュリティ体制で安心・安全な会議運営を
会議のセキュリティ対策は、物理環境、システム・ネットワーク、運用ルール、エンドポイント保護、緊急対応、継続的改善の各要素を統合的に設計することが肝要です。
本記事で紹介した具体策を自社の会議運営に取り入れ、セキュリティリスクを最小化した安心・安全なコミュニケーション環境を構築しましょう。

