袈裟固め(けさがため)は、寝技の基本中の基本として古くから伝わる抑え込み技です。相手の頸部と肩を斜めに抱え込むことで、体重を巧みに乗せ、安定して相手を制圧できます。しかし、正確な身体の配置や圧のかけ方を知らないと、すぐに逃げられてしまうのが難点。
本記事では、着衣の掴みどころから足の入り方、体重配分、抑え込みを強固にするポイント、よくある失敗の修正法までをわかりやすく解説します。ぜひ練習のお供にお役立てください。
1. 袈裟固めの狙いどころとメリット
袈裟固めは背後から相手の襟と腕を抱え込む形で抑えるため、胸部から肩甲骨周辺に強い圧をかけることができます。相手は腰を回して逃げようとしても、身体が斜めに固定されるため逃走経路が限定され、極め技への移行もスムーズです。
1-1. 斜めの力線を作る
袈裟固めの最大の特徴は、力の入り方が斜めに走る点です。相手の肩甲骨を自分の体側に引きつけ、その斜めのラインに自らの体重を乗せることで、相手の胸部が持ち上がりません。これにより、小柄な選手でも大柄な相手を安定して抑え込める利点があります。
1-2. 極め技への移行が容易
相手が防御のために上体を丸めると、胸部に隙間ができやすく、腕ひしぎ十字固めや腕絡十字固めなどの腕関節技へとスムーズに移行できます。袈裟固め自体の抑え込み力に加え、次の展開に繋がるメリットが大きいのです。
2. 袈裟固めの基本手順と身体の配置
袈裟固めを正確に習得するには、掴みどころ、足の入り方、体重配分という3つの要素を段階的に身につけることが重要です。
2-1. 上襟と袖口の掴みどころ
まず、相手が仰向けに寝た瞬間、こちらの右手で相手の左襟を深く掴み、左手で腕の袖口あたりをしっかりと押さえつけます。襟を深く取ることでタテ方向の引き付けを強化し、袖を押さえることで斜め方向の抑え込みを安定させます。
2-2. 右足の入り方と股関節の使い方
掴みが決まったら、相手の左腕の下をくぐるように自らの右足を相手の腕へ滑り込ませます。このとき、膝を床に近づけて股関節を深く曲げることで、腰から体重を落としやすくなり、そのまま相手の胸にお尻を近づけるように移動します。
2-3. 体重配分と胸圧のかけ方
腰を相手の胸部にぴったりと 붙けたら、足は横に大の字に開き、バランスを取ります。体重は手で押さえるのではなく、胸骨を相手の胸部中央に乗せるイメージで前方に重心をかけましょう。これにより、両手だけで抑え込むのではなく、胸全体で圧をかけられます。
3. 袈裟固めのバリエーションと極めへの応用
基本の袈裟固めを安定させたら、次は腕絡十字への移行や膝袈裟などのバリエーションを組み込み、一本を奪いやすい形を作ります。
3-1. 腕絡十字(うでがらみじゅうじ)への移行
相手が胸圧に耐えて腕を伸ばしてくる場合、左手で腕の肘の内側を引き寄せ、右手で相手の掌を自分の腰の下へ押し込むようにして腕を絡めます。そのまま身体を回転させて相手の腕を十字に伸ばすと、袈裟固めから極めへ完璧に移行できます。
3-2. 膝袈裟固め(ひざけさがため)
基本の袈裟固めの形を維持しつつ、内側の膝を相手の肩甲骨の下に差し込むと、より圧が高まる膝袈裟に移行できます。膝で斜めのラインを押さえ、胸圧と合わせて相手の上体をさらに固定することで、逃げ場を完全に封じます。
4. 初心者が犯しやすいミスと修正ポイント
初心者が袈裟固めを習得する過程でよく起こる失敗と、その修正方法を把握しておきましょう。
4-1. 抑え込みが浅く、相手に逃げられる
胸圧が弱い場合は手首だけで抑えようとしてしまいがちです。胸全体で相手の胸部を押さえつけるイメージを持ち、股関節を深く曲げて体重を落とし込む練習を繰り返しましょう。
4.2 膝の位置がずれて安定しない
膝が相手の脇や腕の上に乗っていると、相手が体をひねって抜け出しやすくなります。膝は肩甲骨の下か胸骨の横あたりに差し込み、広い土台を作る意識を持つことが肝要です。
5. 自宅でできる袈裟固め強化ドリル
道場以外でも袈裟固めの感覚を磨ける、自宅ドリルを紹介します。柔らかいマットやクッションがあればすぐに取り組めます。
5-1. 枕・クッション練習
相手の代わりに厚めの枕やクッションを胸元に抱え込み、左右に身体を揺すりながら落とし込む練習を繰り返します。体重をしっかりと乗せる感覚を養い、胸圧の強化につなげましょう。
5-2. パートナードリル(押さえ込み耐久戦)
道場仲間と組んで、袈裟固めをかけたまま相手が肩を浮かせずに耐えられる時間を計測します。30秒、1分、2分…と記録を伸ばしていくことで、抑え込みの強さと耐久力が飛躍的に向上します。
まとめ:袈裟固めを極めて寝技の基礎を固めよう
袈裟固めの基本を徹底解説した本ガイドでは、狙いどころ、身体の配置、応用パターン、よくあるミスと自宅ドリルまで網羅しました。袈裟固めは柔道の寝技における土台です。まずは基本を体に染み込ませ、応用・極めへとステップアップしてください。
安定した袈裟固めがマスターできれば、あなたの寝技は格段に強固になります。

