ハンドボールにおいて「パス」はチームプレーの要。正確なパスを瞬時に出せるかどうかが攻撃のリズムを生み、得点機会を増やす鍵となります。初心者の段階で基礎をしっかり身につけることで、中級者以降の高度な技術習得もスムーズになります。
本記事では、基礎理論から効果的なドリル、練習時のポイント、よくあるミスと改善方法までを網羅します。
1. パスの基本動作を理解しよう
ハンドボールのパスは「グリップ」「スタンス」「スイング」「リリース」「フォロースルー」の5要素で構成されます。これらが連動して初めて正確かつ強力なパスが実現します。まずは各要素のポイントを押さえましょう。
1.1 グリップ:ボールの握り方
ボールは指の腹全体で包み込むように握り、親指と小指でボールをコントロールします。手首は軽く曲げ、リリース時にスナップを効かせられる状態をキープ。手のひら全体でボールを支えることで、パスの方向性が安定します。
1.2 スタンス:下半身の安定
足は肩幅程度に開き、投げる手と反対側の足を一歩前に出すランジポジションが基本です。膝は軽く曲げ、重心を低く保つことでバランスを向上。瞬時に方向転換ができるよう、つま先は常に進行方向に向けておきましょう。
1.3 スイングとリリースの連動
スイングでは肩と肘を使い、体幹のひねりを加えてパワーを生み出します。ボールを背後に引いた後、体の回旋を一気に解放しながら手首をスナップ。リリースポイントは顔の高さから少し前方が理想で、腕をまっすぐ伸ばすイメージで放つと直線的なパスが出せます。
2. 初心者向けパス基礎ドリル
理論だけでは身につかないので、実践的なドリルで動作を体に刻み込みましょう。ここではペアドリル、トライアングルドリル、壁打ちドリルの3種を紹介します。
2.1 ペアキャッチ&スロー
二人一組で対面し、一定距離からパスとキャッチを繰り返します。最初は3m程度の短い距離で始め、慣れたら距離を徐々に5m、7mと伸ばしましょう。相手の胸あたりを狙い、ボールを持つ側は体の正面でリリースし、受け手は両手でしっかりキャッチすることを意識します。
2.2 トライアングルラン&パス
三角形に配置した3人で、中央のプレーヤーが常にパスを受けるドリルです。1→2、2→3、3→1の順でパスを出しつつ、受けたらすぐに別の頂点に移動。動きながらパスを出す練習になるため、実践的な判断力と動きの連動性を養えます。
2.3 壁打ちドリル(リバウンド利用)
壁に背を向けて1mほど離れた位置から、胸の高さを狙ってパスを壁に投げ返します。リバウンドで戻ってきたボールを片手キャッチし、同じ動作を反復。壁打ちは一人でもでき、フォームの一貫性をチェックしながら回数をこなせる点が魅力です。
3. 練習のポイントと改善方法
ドリルを行う際は、ただ回数をこなすだけでは効果が薄いです。意識すべきポイントを押さえ、ミスを改善しながら質を高めましょう。
3.1 フォロースルーを徹底
パス後に手を最後まで伸ばしきらないと、ボールが浮いたり落ちたりしやすくなります。キャッチされた後も手の動きを止めず、肘を伸ばしきってからゆっくり戻すことで、安定した放物線を描くパスが可能になります。
3.2 キャッチ動作の速さを意識
パスの精度はキャッチの速さにも左右されます。受け手はパスが飛んでくる瞬間に手を構え、ワンタッチでキャッチできる準備を。両手で包み込むようにキャッチし、次の動作への移行をスムーズに行いましょう。
3.3 目線とコミュニケーション
初心者ほどパスの際に目線が落ちがちですが、相手の胸元から目を離さずに状況を把握しましょう。また、声を掛け合うことでタイミングが合いやすくなり、ミスを減らせます。
4. 実戦に近い応用ドリル
基礎が固まったら、ゲーム状況を想定した応用ドリルに挑戦。パススピードや距離、動きながらの連携を磨きます。
4.1 ランダムパスドリル
コーチや仲間がランダムに指示する番号に応じて、指定されたプレーヤーに即座にパスを出すドリル。番号が読み上げられるごとにスピードもタイミングも変わるため、反射神経と判断力が鍛えられます。
4.2 動きながらのワンツーパス
1対1の状況を想定し、サポート役とワンツーパスを繰り返します。1→2→1のリズムで走りながらパスと戻りを行い、ディフェンダーをかわす動きを習得します。
4.3 ショート&ロングパス混在ドリル
3~5m程度のショートパスと、10~15mのロングパスを組み合わせたドリル。使い分けることで、チーム戦術に応じたパスバリエーションを身につけられます。
5. 初心者が陥りやすいミスと修正ポイント
フォームや動きの中でよく見られるミスを把握し、的確に修正しましょう。
5.1 ボールが指から滑り落ちる
グリップが甘いと指先でボールをつまむような状態になり、パス時に滑りやすくなります。指全体でボールを包むように握り、手首の角度をキープしましょう。
5.2 リリースタイミングの遅れ
ボールを持つ時間が長いとディフェンダーに詰められミスパスに。キャッチからリリースまでの動作を最短化するため、反復練習でフォームを固めましょう。
5.3 体重移動が不十分
投げる側の体重移動が遅れるとパスに力が乗りません。スタンス時のランジからスイングへスムーズに移行し、地面をしっかり蹴る感覚を掴みましょう。
6. メンタル&フィードバックの活用
練習成果を最大化するには、フィードバックとイメージトレーニングが効果的です。
6.1 ビデオチェックで自己分析
練習をスマホで撮影し、自分のフォームを客観的に確認します。良い動きと悪い動きを見比べることで、修正すべきポイントが明確になります。
6.2 イメージトレーニング
目を閉じて理想のパスフォームを詳細に想像する「可視化」は、脳に動作をインプットし、実際の動きに反映されやすくなります。
まとめ:基礎を固めてチームプレーを支えるパサーになろう
グリップ、スタンス、スイング、リリース、フォロースルーの基本構造から、ペアドリル、トライアングルドリル、応用ドリルまでを紹介しました。
フォームチェック、ビデオフィードバック、イメージトレーニングを組み合わせ、継続的に練習することで、安定した正確なパスが身につきます。確実なパスでチームの攻撃を支え、ハンドボールの醍醐味を存分に味わってください。

