会議後の振り返りを体系化し、次回の改善に確実につなげるためのKPT（Keep/Problem/Try）手法。短時間で効果的に参加者全員の気づきを吸い上げ、会議運営のPDCAを高速に回すことができます。
本記事では、導入メリットから準備、実践ステップ、オンライン対応、定着化のポイントまで詳しく解説します。
KPT振り返りとは何か？基本概念とメリット
KPTの構造と狙い
KPTは、Keep（継続すべきこと）、Problem（問題点）、Try（次回試したいこと）の三つの領域に議論結果や会議運営の気づきを分類するフレームワークです。Keepでは成功体験や効果的だったプロセスを明確化し、Problemではボトルネックや課題を洗い出します。
そしてTryで具体的な改善案を策定。全員参加型で俯瞰的に会議を振り返ることで、継続的な品質向上を実現します。
KPTを導入するメリット
まず、会議の成果とプロセスを分かりやすく可視化できる点が大きなメリットです。個人の感想や雑談に偏りがちな振り返りを構造化することで、実行可能なアクションプランを得やすくなります。
また、参加者全員が意見を出す機会を平等に持つため、属人的な議事運営リスクを減らし、チーム全体のナレッジ共有とモチベーション向上にも寄与します。
事前準備：KPT振り返りを成功させるためのポイント
振り返りのタイミングと所要時間設定
振り返りは会議終了直後、参加者の熱量が高いうちに行うのが最も効果的です。所要時間は全体で15～20分程度を目安に、Keep：5分、Problem：5分、Try：5～10分でタイムボックスを設けましょう。時間管理を徹底することで、振り返りがダラダラせず、次回の会議スケジュールにも影響を与えません。
ツールとフォーマットの用意
対面会議ではホワイトボードや付箋紙、オンライン会議ではMiroやGoogle Jamboardなどのホワイトボードツールを用意します。
あらかじめ「Keep」「Problem」「Try」の３カラムを作成し、参加者が思いついたアイデアを付箋に書き出して貼り付けられる状態にしておくと、スムーズにスタートできます。
ファシリテーターの役割確認
KPT振り返りはファシリテーターの進行が成功の鍵を握ります。進行役は各領域で付箋をグルーピングし、重複を整理。発言の偏りを防ぎ、全員に発言機会を促す役割を担います。事前に進行フローを共有し、ファシリテーターとタイムキーパーを決めておきましょう。
実践ステップ：KPT振り返りの進め方
ステップ1：Keepの抽出（継続点）
最初に、会議で「うまくいったこと」「効果的だった手法」を洗い出します。参加者には「今日の会議で特に価値があった点」を短く付箋に書いてもらい、Keepカラムに貼り付けていきます。
グルーピング後、代表的な成功要因を全員で共有し、なぜ効果的だったかを簡単に紐づけると、次回以降も同様のプロセスを再現しやすくなります。
ステップ2：Problemの抽出（課題点）
次に、「うまくいかなかったこと」「障害となった要因」をProblem領域で洗い出します。参加者にはポジションを問わず自由に課題を提示してもらい、客観的かつ具体的な表現を促します。出揃った課題は重要度・緊急度で優先順位をつけ、問題点の本質を見極めるために「なぜ？」を深掘りしましょう。
ステップ3：Tryの策定（改善案）
最後に、Problem領域で上位となった課題に対する解決策をTry領域で検討します。各課題に対し、実行可能な具体案を複数挙げ、担当者や期限感も併せて記載すると実行に移しやすくなります。
Tryでは「新しい試み」「次回変更したい手法」をフォーカスし、改善策を小さな実験として捉えると心理的ハードルが下がります。
オンライン会議でのKPT振り返り活用法
Miro／Jamboardによるリアルタイム付箋
オンライン環境では、MiroやJamboardなどの共同編集可能なホワイトボードツールが有効です。事前に３カラムを用意し、参加者全員に編集権限を付与。リアルタイムで付箋を入力・移動できるため、対面と同様の体験をオンラインで実現します。
また、ワーク時間をタイマー表示し、緊張感を保つ工夫も取り入れましょう。
チャット投票による優先順位付け
Problemの優先順位を決める際は、チャット機能を使った投票を活用します。数字をエモートでリアクションするだけで集計が可能なため、ツールに不慣れな参加者も簡単に参加できます。Try策定時には、小規模ブレイクアウトルームでグループディスカッションを行い、改善案を深掘りすると効果的です。
フォローアップ：Try実行と効果検証
アクションプランのタスク管理
振り返りで決定したTryは、必ずタスク管理ツール（Trello、Asana、Backlogなど）に登録し、担当者と期限を明記します。進捗を可視化し、定例ミーティングでレビューを行うことで、改善施策の実行率を高められます。
成果測定と次回へのインプット
Try実行後は、成果を測定するためのKPIを設定し、定量・定性で評価します。例えば「会議時間の短縮率」「参加者満足度向上」「決定事項実行率」など、具体的な指標を追うことで、振り返り活動の効果を客観的に検証できます。
得られたデータは次回KPTのProblemとしてフィードバックし、継続的に改善サイクルを回しましょう。
定着化のための運用ポイント
定期的なKPTミーティングの設定
KPT振り返りを単発で終わらせず、プロジェクトや四半期ごとに定例化することで、継続的改善文化を醸成します。振り返り結果を社内Wikiやダッシュボードに集約し、成果と改善点を全社で共有すると、横展開が促進されます。
成功事例の共有と表彰制度
効果的なTryを実践し、成果を上げたチームや個人を表彰する仕組みを導入すると、参加意欲がさらに向上します。成功事例を定例会議で紹介し、KPT振り返りの価値を組織全体に伝えることで、定着率が高まります。
まとめ：KPT振り返りで会議を次のレベルへ
「会議のためのKPT振り返り」は、会議の成功要因と課題を明確化し、次回に向けた具体的な改善策を迅速に策定する強力な手法です。
事前準備、実践フロー、オンライン対応、フォローアップ、定着化までを一貫して実行すれば、会議は単なる意見交換の場から、組織を前進させるイノベーションの源泉へと変わります。
